何が起こるわけでもない。
特に大事件が勃発するでも、痛快アクションが繰り広げられるわけでもなく。
ただ物件のある街をぶらぶらするだけの漫画。
なのに、どうしてハマってしまうのか。
『吉祥寺だけが住みたい街ですか』(マキヒロチ)。
2015年から『ヤングマガジンサード』(講談社)で連載中の漫画である。
さらに2016年にはテレビ東京にて実写ドラマ化し話題となった。
今回は、新感覚な街ブラ漫画『吉祥寺だけが住みたい街ですか』を語りたい。
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それでは早速『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』を紹介してゆく。
ゆるっと街ブラ漫画『吉祥寺だけが住みたい街ですか』あらすじ
雑司ヶ谷、五反田、錦糸町、駒澤大学、中野…「住みたい街No.1=吉祥寺」は間違っていた!?吉祥寺で不動産を営む重田双子(しげたツインズ)はどこにでもある街へと変わっていく吉祥寺に不満たらたら。なのに、お部屋探しにやって来るのは「住みたい街No.1=吉祥寺」の幻想を抱く女子ばかり!だから、今日も紹介しちゃうんだな“吉祥寺以外”の街を。最旬作家・マキヒロチが描く街ぶらラブな不動産マンガ!
切り口が斬新である。
愛すべきキャラたちが、愛すべき東京の街々を歩きまわる。
それだけのことなのだが、漫画越しに流れるそのゆるっとした時間は、どうしようもなく愛おしい。
私たちにも何度かは訪れるであろう「物件探し」をテーマにした漫画『吉祥寺だけが住みたい街ですか』の良さをまとめてみた。
ポイント①:人生の岐路に、不動産あり。
不動産屋に来る客は、幾らか引っ越す理由がある人であり、何かしら人生の岐路に立っている場合が多い。
引っ越しを機に新たなスタートを切ろうと扉を開けた客を出迎えるは、巨漢の双子姉妹。それがこの物語の主人公であり、吉祥寺で小さな不動産屋を営む重田ツインズなのである。
金髪で社交的な性格の姉・富子と、黒髪眼鏡の内向的な妹・都子。
どちらもそれなりのデブ。
客にはタメ語。吉祥寺に住みたいという客を(半ば無理やり)吉祥寺以外の街に連れていく。
一見、絶対に行きたくない不動産屋に思えるが、この重田ツインズと街歩きをした客は、大抵その街に住むことを決めてしまう。それは彼女たちが客のことを考え、街選びを通じてその人にあったライフスタイルを提案するからである。不動産屋にしてはお節介すぎるほどに深入り、まるで友達のように寄り添い、それぞれの人生のタイミングに適した街を紹介するのだ。
「物件探し」という決まった構成を繰り返すオムニバス形式ではあるが、重田ツインズを訪ねてくる客はそれぞれ違った岐路に立ち、様々な悩みを抱えている。そんな客と姉妹との街ブラやり取りは各話ごとに新たな発見があり、私たち読者にも多様な人生観をあたえてくれる。
この漫画越しに読む「物件探し」は、人生を見つめ直すきっかけになるのだ。
ポイント②:「街を引っ越す」という発想
不動産屋を訪ねる時、私たちは「物件を越す」という視点であることが多いだろう。
しかし、この漫画はそんな引っ越し観に新たな考え方を提供してくれる。
「街を引っ越す」という視点だ。
前述の通り、双子の姉妹は訪ねてきた客を(吉祥寺以外の)様々な街へと案内する。彼女たちは物件をさておき、その「街」の魅力を客に紹介していくのである。
ある客には錦糸町を、別の客には駒澤大学を、あらゆる街々の固有のライフスタイルを提案してゆくのだが、それを読み進めているうちに物件探しが本題であることを忘れてしまうから面白い。
というより、この漫画では寄り道が本題なのである。
「この”街”に住む」。
姉妹の案内で物件を決めた客は、そう語る。
当たり前のようで、忘れてしまいがちな感性だ。
ポイント③:街ブラ番組、付けっぱなし的感覚
この漫画の良さは、延々と読めてしまうところにある。
「出没!アド街ック天国」や「マツコが巷の街を徘徊する」といった、いわゆる街ブラ番組(アド街は、ぶらりとするわけではないが…)を特に意志もなくダラっと見続けている時のような感覚。
脱力感と幸福感の入れ食いのような、そんな読書体験なのだ。
双子の2人が発するワードには、時に秀逸さがあり、テンポよく胸に響く。登場する幾つもの街並みは、現実のそれと同じ匂いや味わいを放っている(ように見える)。
たまには何も考えずにゆる〜い漫画を読みたい、そんな日に打ってつけの漫画だ。
街ブラ漫画『吉祥寺だけが住みたい街ですか』まとめ
この漫画を読んでいると、なんだか引っ越ししたくなってくる。というより何だろう、新しいことを何か始めたくなる、という方が正しいかもしれない。
漠然と今の自分に物足りなさを感じている時は、この漫画が新しい風を吹かせてくれるだろう。
既刊6巻(2019年5月)。ゆるい街ブラ漫画、侮ることなかれ。
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