己の拳ひとつで勝敗が決まるスポーツ、ボクシング。
野球漫画やサッカー漫画と比較するとボクシングを題材とした漫画作品はそこまで多くはありませんが、『はじめの一歩』や『あしたのジョー』などの名作が非常に多いジャンルでもあります。ボクシングと共に描かれる男らしい生き様が人気の秘訣かもしれません。
今回はそんな名作たちに勝るとも劣らないボクシング漫画『リクドウ』の魅力をご紹介します!
ダークな世界観に引き込まれること間違いなしですよ!
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ボクシング漫画『リクドウ』松原利光(集英社) 基本情報
まずは『リクドウ』の基本的な情報について説明していきます!
あらすじや漫画の特徴、そして作者である松原利光さんについてなど、『リクドウ』を読む前にこの漫画のポテンシャルを覗いてみて下さい!
漫画『リクドウ』あらすじ
あらすじ
父親を失った少年・芥生リクは借金取りの元ボクサー・所沢京介と出会う。理不尽に満ちたこの世界で、人は何をよすがに生き抜くのか。戦うのか。人生という茨の道を歩む芥生リクの破格の拳闘ストーリー! 少年には何もない。その拳以外は。
参照:https://booklive.jp/product/index/title_id/297607/vol_no/001
2014年から2019年まで週刊ヤングジャンプ(集英社)で連載され、人気を博した作品です。アメトークのマンガ大好き芸人の回で、ケンドー・コバヤシさんに面白いと紹介されていた作品でもあります。
内容としては、壮絶な環境で生まれ育った少年・芥生リクが一人の男との出会いを経てボクシングにのめり込んでいく物語。
この作品はボクシングを題材としている作品ですが、仲間や友情といったスポーツ漫画にありがちなストーリーではなく、シリアスでダークな雰囲気が特徴です。特に主人公・リクのバックグラウンドはスポーツ漫画の粋を超えていると感じてしまうほど悲惨なもの。しかし、そんな環境だからこそ滲み出てくる人間味だったり価値観だったりが非常に面白く、読み応えのある作品となっています。
熱い青春が魅力の少年スポーツ漫画とは違い、青年漫画だからこそ描けるヘビーな内容が魅力的なスポーツ漫画です!
作者・松原利光さんについて
参照:https://twitter.com/Matsubara_Toshi
作者の松原利光さんは和歌山県出身の男性漫画家で、奥さんの加藤キャシーさんも同じく漫画家です。
2006年に、『GUN BEAT』が第56回ヤングジャンプ月例MANGAグランプリにおいて期待賞を受賞。翌2007年、卓球を扱った作品『フリーダムスマッシュ』がヤングジャンプ増刊 漫革(集英社)にて掲載されデビューを果たします。2008年には、第82回ヤングジャンプ月例MANGAグランプリにおいて『領域の守護者』が月例賞、月間ベスト賞、審査員特別賞の3つを受賞。2011年にはミラクルジャンプ(集英社)にて『COMBAT QUEEN BEE』、『カラミティジェーン』の2本が掲載されます。
その後、2014年から当作品『リクドウ』の連載が週刊ヤングジャンプでスタートし、2019年に完結(全23巻)。
『リクドウ』の連載前は、原泰久さんが連載している『キングダム』のアシスタントを経験しているそうです。『キングダム』は書き込みが非常に多い作品です。その中でエースアシスタントとして連載を支えていたようで、画力が高いのも肯けますね!
そして現在は『黒鉄のヴァルハリアン』を週刊ヤングジャンプにて連載中。これからも目が離せない漫画家の1人ですね!
ボクシング漫画『リクドウ』の3つの魅力を徹底解説!
ここからは『リクドウ』の魅力的な3つのポイントについて解説していきます!
独特な世界観を持つ本作ならではのおすすめポイントが盛り沢山。1つずつ見ていきましょう!
『リクドウ』の魅力①:狂気あふれる世界観
リクドウが他のスポーツ漫画と大きく異なり、尚且つリクドウの面白さを引き立てているのがその世界観です。
非常にシリアスな展開と気が滅入ってしまうようなダークな世界観から成るこの作品、なんといっても主人公・芥生リクの育った環境が悲惨すぎます。
参照:https://ynjn.jp/app/title/136
物語開始時点でリクは、狭くてボロいアパートの一室で父親と二人で暮らしていました。母親は出て行っており、ヤクザの愛人となっています。
すでにこの時点でヤバい匂いがプンプンしますが、さらにヤバいのはここからです。
参照:https://www.clipstudio.net/oekaki/archives/152353
父親は借金を抱えており、借金の取り立て屋がやってきます。
借金取りの男が扉を蹴破ると、なんとそこには自殺した父親をサンドバッグのように殴るリクの姿が。しかも泣くわけでも笑うわけでもなく、無表情というのがかなりコワイです。
この後借金取りの男に「死んだお父ちゃんどーして殴るんだ?」と問われたリクは、「いつもされてたことをやり返してみようかな・・・と思って」と答えます。
そう、リクは父親に虐待されていたのです。普段から殴られていたから、やり返してやる、と。
幼い子供にここまで感じさせてしまうほどの、過酷な環境で育ったリク。
そしてそんなリクにボクシングと現実を教えるのがこの借金取りの男・所沢京介なのです。
元々はOPBF(東洋太平洋ボクシング連盟)チャンピオンという実力者。怪我が原因でボクシング界から姿を消し、現在はヤクザとなっています。
リク自身を殴って、ジャブを教える京介。
これが、リクがボクシングに触れる初めての機会となります。
そしてジャブと同時に残酷な現実も教えます。
子供に何教えてるんだ。。。
その後ヤクザの愛人である母親に引き取られたリク。
ヤクザが出てくる時点で嫌な予感しかしませんが、案の定更なる地獄がリクを待ち受けているのです。
参照:https://twitter.com/jump_bookstore/status/720551477563891714/photo/1
母親は薬漬けで、ヤクザのいいなり。薬欲しさに、リクがいる目の前でなりふり構わず性行為を始めるのです。
そんな母親を止めようとしたリクはヤクザに殺されかけるのですが、京介から教わったジャブでヤクザの顎を打ち抜きます。
ジャブでダウンをとったリクは灰皿で殴ってヤクザを殺してしまいます。もちろん正当防衛ですが。
その後母親は捕まり、施設に引き取られることになります。
そして京介への憧れを胸に、ボクシングを始めることとなるのです。
ここまでですでに壮絶な経験をしているリクですが、施設でも彼の地獄は終わりません。
やっとできた信頼できる先生が、ヤクザを殺した報復として別のヤクザにレイプされてしまうのです。
参照:https://ko-819.hatenablog.com/entry/2019/12/29/171400
襲われたところを助けてくれたのは、憧れの京介でした。
自分が弱いからいけないんだ、と強さを求めるようになったリクは、ここから狂気的なボクサーへの道を歩き出していくことになります。
この過酷で悲惨な過去が、彼を異常なボクサーに育てていくのです。
凄惨な極道漫画と見紛うほど圧倒的な暗さを醸し出しているこの作品。
非常に気が滅入る展開ではありますが、この過去あってこそこの先のリクの成長にワクワクするのです。
『リクドウ』の魅力②:ボクシングにのめり込んでいくリクの生き様
前述の通り、あり得ないほど悲惨な過去を抱えているリク。
自分の弱さを嘆いた彼は、強さを求めて、京介が過去に在籍していた馬場ジムで教えを乞うことになります。
「強くなって自分をやり直したい」
リクは過去に何度も居場所を失ってきましたが、やっと見つけた最後にして唯一の心の拠り所がボクシングなのです。
そんなボクシングを失わないように、そして強くなるために、この強迫観念のような一つの信念だけで、リクは真っ直ぐ進み続けていくのです。
参照:https://mangafull.jp/recommend-rikudou
毎回、吐いてしまうほどまで練習します。
強くなるために、ここまで自分を追い込める精神力がヤバいです。
リクは父親の虐待から身を守る術が必要でした。
その結果として、人体の急所を感覚で理解できようになります。
そして過去の経験から「殺らなければ殺られる」と本能で理解しているのです。
殺すつもりで急所を殴っていく容赦のないリク。
的確に相手の急所を打ち抜いていく姿は悪魔のようで、それでもカッコ良くて。
強さへの憧れ、ボクシングへの熱い想い、そして何より人間としての生存本能が剥き出しで描き出されています。
リクの危うさや狂気じみた姿に引き込まれていくのです。
『リクドウ』の魅力③:臨場感満載の試合描写
そしてスポーツ漫画としてかなり重要になってくるのが、試合シーン。
ボクシングの試合は1対1の殴り合いですから特に大切になってきますが、『リクドウ』のボクシングシーンは期待以上の迫力があります。
血や汗、嘔吐物などの細かい書き込みがすごい。
さすが、『キングダム』のエースアシスタントを務めていただけあります。
こちらは見開きのシーン。
血の書き込みは細かいものの、背景はほとんど真っ白。
見開きでここまで贅沢に使った構図が素晴らしいです。
相手を打ち抜いた瞬間の一瞬の静寂のようなものが感じ取れます。
参照:https://ko-819.hatenablog.com/entry/2019/12/29/171400
人体の外枠の線が曖昧に描かれていて、立体感がすごいです。
そして、決定的瞬間ということがありありと伝わってきます。
試合シーンと言っても、一括りにできないほど様々な描き方で表現している松原さん。
画力ヤバいです。
ボクシング漫画『リクドウ』の名言
壮絶な過去の経験から、強さを追い求めるリク。
そんな彼や彼を取り巻く人物たちですから、結構深いやりとりも出てきたりします。
ここからは、『リクドウ』の中でも特に印象的なセリフをいくつかご紹介していきます!
名言①:「自分の価値を得るためなら死んでもいいと思うんだ」
辛すぎる過去から強さへの憧憬を抱いたリク。
自分の無力を痛感していたリクは自分に価値がないと思っていました。
そんな彼がやっと見つけたボクシングという居場所で、どれだけ本気で挑んでいるのかということがありありと伝わってくる一言です。
「死ぬ気で」というのは彼の経験あってこそですが、この熱量で一つのことに向かって努力することってなかなかできないですよね。
大きな成長にはやはりそれに見合っただけの努力が必要とされます。
リクの1%でもいいから見習いたいです。。。
名言②:「それが敗者の姿だ よく見とけ」
前述の通り、父親の死体を目の前にして京介が放った一言。
非常にシビアなセリフですし子供に言うことか?と感じる部分もありますが、「お前は負けるな」という一種の激励にもとれるのではないでしょうか。
そしてヤクザという環境に身を置く京介だからこそのセリフでもあります。
作品の世界観が滲み出ている一言ですね。
名言③:「リクも・・・楽しんでいいじゃん ボクシング」
リクと一緒に施設で育った女の子・苗代ユキのセリフです。
自己脅迫のような強さの渇望や過去に自分の手で人を殺した経験から、狂気に取り憑かれながらボクシングにのめり込んだリク。
そんな傷ついた彼に、楽しめばいいと伝える苗代の優しさにグッときます。
しかもずっと近くでリクを見てきた苗代が言うからこその深み。沁みました。
ダークな内容だからこその深みのある言葉ばかり。
生きていくこと、そしてその人生の中で自分を見つめ直すこと、そんな時に背中を押してくれるセリフが多い作品です。
ボクシング漫画『リクドウ』の魅力を徹底紹介!まとめ
参照:https://avexmovie.jp/rikudo-netabare/
ここまでボクシング漫画『リクドウ』の魅力について語ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
凄惨な過去や人間の本能などがありありと描き出されたダークな展開の作品ですが、だからこそ浮き上がってくるボクシングへの情熱や強さへの憧れが魅力的です。
そして圧倒的画力で展開される試合シーンにどんどん引き込まれてしまいます。
最初の幼少期時代のエピソードは少し苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、後半に行けば行くほど熱い展開が待っています。『リクドウ』に興味が湧いた方は、最初だけで離脱せずに是非試合シーンまで読んでみてください!きっとその頃にはハマっていると思いますよ!!
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それでは素敵な漫画ライフを!
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